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世界史教室

大学受験生のための世界史問題解説

過去問センターワンフレーズ論述参考書疑問

東大世界史メール

過去問 -東京大学

Aさんのメール

 東大の問題文によく出てくる「留意」という語句はどこまで書けばいいと言っているのですか? 書かなくても見てくれる、ということですか?

 ▲「留意」は意に留めることだから、書いたものから自然とわきでてくるもので、とくに気に留める必要はない、とアドバイスしている参考書もあります。これは、しかし、明らかな誤解です。「留意」を国語辞典でくると、「無視することがないように気をつけること。また、そのように言動すること。」と定義しています(『三省堂新明解国語辞典』)。つまり留意事項を書け、という命令です。もし書かなくても良いことなら、わざわざ「留意」ということばは要らないはずです。

 実際に過去問で説明すればもっとハッキリするでしょう。

 (1)日本、朝鮮、中国、ロシア(ソ連)は、近代・現代の世界史において、さまざまな関係をとりむすんできた。その関係は、これらの国々の歴史に深刻な影響を及ぼした。とくに1905年と1919年とは、これら4国間の関係にとって重要な転機となった時点である。この2時点間の関連に留意しながら、それぞれの時点における4国間の関係を、国内の重要な動きとかかわらせて論せよ。(以下省略)(1977)

 ……「2時点間の関連に留意しながら」という語句は重要な要求です。1905年と1919年には「関係」があるのであり、ばらばらに書いてほしくないのだ、と注文しています。もしこの部分がないのなら、「1905年については(a)、1919年については(b)を冒頭に入れて書きはじめよ」という問題文でいいはずです。ひとつの問題の中に二つの問題が入っていることになります。そうすると出題者の意図とはちがう問題になってしまいます。

 (2)つぎにかかげる8つの事項は、すべて、ある同一の世紀に属している。それは何世紀か。その世紀における、これらの事項が関係する地域の特徴を論述せよ。その際、この世紀に見られるそうした特徴が、それ以後の発展に対してどのような影響を与えたかという点に、とりわけ留意すること。(以下省略)(1978)

 ……さいごに「影響を与えたかという点に、とりわけ留意すること」とあり、この問題も影響を書かなくていいのなら、なぜこの「留意」という語句が必要なのかわかりません。絶対、書け、という命令と同じです。

 (3)1850年代から1870年代半ばにかけての世界は、さまざまな点で顕著な時代的特徴をもっている。これは欧米における科学技術の進歩、経済の発展、国際政治の変化、そして、これらにもとづく欧米と他の地域との関係の新展開のなかに認められる。この時代の特徴を、科学技術、経済、社会、政治の相互連関に留意し、前後の時代をも考慮しながら、600字以内(句読点も1字に数える)で述べよ。(以下省略)(1979)

 ……「相互連関に留意し」ということは、それぞれの分野は関連していますよ、ということを示唆しており、ばらばらに書かないでくれ、と注文をつけているのです。もちろんこの注文通りに書かないと点は低いでしよう。

 (4)スパルタの奴隷制度について、国家のしくみとのかかわりに留意しながら、簡単に説明せよ。(1980)

 ……「国家のしくみとのかかわりに留意しな」かったら点はないでしょう。奴隷制と国家のしくみがどれだけ関係づけて書けるか。これは得点の決定的なポイントです。もしヘロットについてだけ書いて終わったら、受験生が問題を読まなかったのだろうと判断して採点官はゼロ点をつけるでしょう。

 (5)20世紀の民族運動の展開を考えるさい、第一次世界大戦の前後の時期は大きな意味をもっている。この時期にはユーラシアの東西で旧来の帝国が崩壊し、その結果一部の地域では独立国家も生まれたが、未解決の問題も多く残った。それは、現代世界の民族と国家をめぐる紛争の原点ともなった。こうした旧来の帝国の解体の経過とその後の状況について、とくにそれぞれの帝国の解体過程の相違に留意しながら(以下省略)(1997)

 ……「相違に留意しな」いのなら、帝国の例を適当にあげて、ばらばらに書いてもいいはずです。ロシア帝国はこうこう、清朝はこうこう、と。問題文も「……の状況について」で終わっていいはずです。なぜわざわざ「とくに」以下が必要だったのか? もちろん相違を書いてほしいからです。留意しようが、しまいがどちらでもいい、という態度は出題者側にはありません。過去問を解説した参考書でこのことを「留意」して書いたものはほとんどありません。いかにいいかげんに問題を読んでいるかが分かります。

 (6)(前文省略)そこで、18世紀から19世紀末までのアメリカ合衆国とラテンアメリカ諸国の歴史について、その対照的な性格に留意しつつ、ヨーロッパ諸国との関係や、合衆国とラテンアメリカ諸国との相互関係のあり方の変化を中心に(以下省略)(1998)

 ……「対照的な性格に留意し」て書け、と命令しています。これももし「留意」せず「対照的な性格」を書かないのであれば、その部分の得点はありません。

Bさんのメール

 ぼくは進学校の高校1年生です。東大を世界史で受験します。満点に近い点数(60点中50点以上)を獲得する「世界史の勉強法」についてききます。

 ホームページでは「教科書の記述でほぼ足りる」という記述が見受けられましたが、東大の問題で50点以上を達成しようとした場合、それで間に合うでしょうか。また、もし間に合わないという場合、即ち東大の第1問目の20点分の記述で教科書外の知識が出た場合、その20点をほとんど失うことになりますか?

 また「テーマ史」に関してはどのような勉強をすればいいのでしょうか。山川出版社やZ会などがテーマ史にのみ焦点を絞った参考書・問題集を出していますが、どれをどのくらいやればいいのでしょうか。


 ▲(1)教科書外の知識が出た場合、その20点をほとんど失うことになりますか。……東大の論述問題は知識面でいえば基本的なことがほとんどです。 他のどんな大学より易しい基本的なデータがもとになっている、といってもいいでしょう。難解なのは知識でなく文章全体の問題に合った構成と思考力なのです。知識面では半分の10点をとることは容易です。ただ配点は第1問が20点というのは俗説で、わたしは24〜30点と見ています。

 

(2)2年間の勉強計画を記します。

 教科書を何回も読む必要はありません。あくまで参考書にすればいいです。それより教科書をカンニングしながら問題集を2冊解くことをすすめます。問題集を解きながら教科書の知識を掴まえる、という方法です。高校の授業の進度がどうであれ、早めに全体を習得する方法です。

 一冊めはセンター試験の過去問集で、教科書に沿って編集してある『大学入試センター試験完全対策 世界史』 世界史B問題集 センター試験問題研究会=編(山川出版社)(714円)を一回解き、二回めは間違えたところだけ解きなおす。

 二冊めは『世界史B  世界史問題集』世界史教育研究会=編(山川出版社)(714 円)を一回解き、二回めは間違えたところだけ解きなおす。

 一冊めは基礎です。センター試験の問題は全体像を知るには良問だからです。教科書以外はカンニングしないで解いていきます。センター試験の良いところは広く浅く出している点で、世界史を広く学ぶにはうってつけです。センター試験・世界史の4テーマの出し方は東大の第1問だけでなく、第2・第3問の出し方と酷似していますから、世界史の東大的なとらえ方を学ぶにも有効です。

 二冊めは中身は私大向きですが、東大の2問・3問のためには必要です。

 この問題集を解きながら、教科書本文にのっている重要な年号を語呂合わせでおぼえていきます。すすめられる語呂合わせの参考書は中谷まちよ著『世界史年代ワンフレーズnew』(パレード)です。この中のセンター試験向きの基本年代が示してあるから、これを覚えたら十分です。同時代の年代も示してありますからヨコもつかめるようになります。

 またおぼえる対象ではありませんが、位置が分からなかったら必ず世界史地図(吉川弘文館『標準 世界史地図』がおすすめ、700円くらい)を見ることです。この地図を見ると同時代の他の地域のできごとも見えてきます。どういう国(王朝)と国(王朝)が同時期に並んでいたのか、気をつけるようにしていってください。教科書巻末の年表を見ても、同時代史はある程度わかるようになります。東大の問題が解けるようになるには、この同時代の隣組がどんな国だったのか、すぐ想起できるようにしておくことが必要ですから。同時代史は年号をおぼえることも助けてくれます。これが2年の終わりまでにできていればいいでしょう。3年の夏までかかってもいいです。

(3)この論述問題集ではない二つの問題集が終わったら、3年生の春か夏から、拙著『世界史論述練習帳new』(パレード)で書く練習をはじめ、論述でどんなことがどのように出題されるかを学びます。

(4)終わったら、東大の過去問のできるだけ古いものを解く練習をする。拙著には過去問が1970年からのっています。書店に並んでいる最近5~6年の問題を解いたって無意味です。とくに東大は最近のテーマや時代は重複しないように出しますから。かえって過去をさかのぼるとよく似た問題があることに気がつきます。予備校のつくる模試は過去問のものまねか、実際より細かすぎる問題だったりして研究の足りないものがほとんどです。レベルの低い模試で実力は養えません。東大の場合は本番の試験問題に優る論述問題はありません。以上で受験の2月末になり合格へ。

(5)テーマ史は勉強する必要がありません。紹介した山川出版社の問題集の二冊めの巻末に各国史とテーマ史が少しついています。この程度でいいです。というのは、参考書にのっているテーマ史を東大は出題しないからです。最近の問題をみてもわかりますが、東南アジア・中国とアメリカなどの貿易とプランテーションの関係、啓蒙思想をもとにしたフランスと中国の18世紀の比較、帝国解体の比較、第一次世界大戦前後の大衆的な政治運動などと問うています。これらのテーマを持っておられる山川やZ会のテーマ問題集とつきあわせてみたら、そんなテーマがどこにも載っていないことを発見するでしょう。テーマ史の問題集や参考書にあるような小さいテーマを東大は出しません。歴史の時間は長く、かつ広く出題するのが東大の出し方なので、テーマ史で対応できません。

 二冊めの問題集は国ごとに時代順ですすんでいくのですが、この中に狭いテーマが問題文にはいっています。税制の歴史や軍事史などです。これらのことを、まず把握していくことが必要です。これを確実に把握しておけば、どこにもない広いテーマで出してくる東大の問題に対応できる知識や時代の流れ、また同時代史が書ける土台ができあがります。山川の問題集の問題文じしんが歴史のテーマ的な解説にもなっていますから、たんに答えをだしていくだけでなく、問題文を理解するようによく読んでください。教科書の解説書にもなっていますから。