世界史教室

大学受験生のための世界史問題解説

過去問センターワンフレーズ論述参考書疑問

センター世界史の解き方・2013年度(4)

第4問 世界史上の君主や王朝について述べた次の文章A〜Cを読み、下の問い(問1〜9)に答えよ。(配点25)

 

A 前近代東南アジアのクメール人の〔1〕王朝では、王個人の呪術(じゅじゅつ)的な力が及ぶ範囲が、国の領域とされた。その呪術的な力は、王をヒンドゥー教のシヴァ神やヴィシュヌ神の化身とする神王観に基づくものであった。こうしたクメール人の神王観は仏教国タイにも伝わった。タイのアユタヤ朝が400年余り存続したのは、〔2〕港市を活用した王室独占貿易の利益とともに、この神王観によって王の権威が高められたからでもあっ子ー。〔3〕19世紀」、植民地化の危機に直面したタイでは、近代化が進むなかで神王観も変化したが、仏教を奉じるタイの王室儀礼には、現代でも依然としてヒンドゥー的な神主観の影響が見て取れる。

 

問1 下線部〔1〕に関連して世界史上の王国や王朝について述べた文として正しいものを、次の〔1〕〜〔4〕のうちから一つ選べ。[ 28 ]

 〔1〕 ムハンマド=アリーが、サウジアラビアを建国した。

 〔2〕 アフガニスタンは、19世紀にロシアの保護国となった。

 〔3〕 コンバウン(アラウンパヤー)朝は、ラタナコーシン朝を滅ぼした。

 〔4〕 ハワイ王国は、19世紀に滅亡した。

 

問1 王国や王朝についての正誤問題。〔1〕ムハンマド=アリー(1805年にエジプト太守。『ワン』の語呂は「アリー、あん1ぱん8お0ご5る)が、サウジアラビアを建国したことはありません。建国は 1932年で20世紀です(『ワン』語呂は「アラビア砂漠、引1く9水32」)。〔2〕アフガニスタンは、19世紀にロシアでなくイギリスの保護国となった、という文章なら正しい。〔3〕(ミャンマーの)コンバウン朝は、(タイの)ラタナコーシン朝でなくアユタヤ朝を滅ぼした、が正文。〔4〕ハワイ王国(カメハメハ朝)は滅亡し、米西戦争中に合衆国が併合しました。これが正解。リリウオカラニ女王がアメリカの圧力で退位させられてハワイ王国は倒れました。1993年、合衆国は併合に対する謝罪を議会で決議しています。その中にわざわざ女王の恨みの文も入れて謝罪しています(→ http://www.hawaii-nation.org/publawall.html)。日本は韓国併合への謝罪はこのようにできるでしょうか?

 

問2 下線部〔2〕に関連して、扶南の港(港市)の名称と、その位置を示す次の地図中のaまたはbとの組合せとして正しいものを、下の〔1〕〜〔4〕のうちから一つべ。[ 29 ]

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 〔1〕 アチェ─a

 〔2〕 アチェ─b

 〔3〕 オケオ─a

 〔4〕 オケオ─b

 

問2 扶南の港(港市)とはオケオ港のことですが、その位置は b であり、a はアチェです。スマトラ島の北端にあり、なんども大地震にみまわれて、この地域のムスリムによる独立運動もつぶれてしまいました。正解は〔4〕。

 

問3 下線部〔3〕の時期に、東南アジアで展開した植民地経済の歴史について述べた次の文aとbの正誤の組合せとして正しいものを、下の〔1〕〜〔4〕のうちから一つ選べ。[ 30 ]

 a オランダは、コーヒーなどの強制栽培制度をジャワに導入した。

 b フランスは、マレ一半島でゴムの生産を進めた。

 〔1〕 a─正  b一正

 〔2〕 a─正  b─誤

 〔3〕 a─誤  b一正

 〔4〕 a─誤  b─誤

 

問3 東南アジアの植民地経済の組合せです。

 a 「ジャワ」島を含むインドネシアはオランダの植民地となり、コーヒー栽培で知られ、1830年から強制栽培制度を実施しました。

 b マレ一半島は「フランス」の植民地ではなくイギリスの植民地です。したがって正解は〔2〕。

 

B ちょうど400年前のロシアでは、ロマノフ家のミハイルが皇帝(ツァーリ)に選出され、〔4〕口マノフ朝の支配が始まった。ただし、1598年に〔5〕リューリク朝が途絶えた後、帝位がミハイルに引き継がれるまでには、好余曲折(うよきよくせつ)があった。リューリク朝最後の皇帝の死後、その義兄などが次々と帝位についたが、やがて内戦が始まり、カトリックを奉じるポーランドの王さえもロシアの帝位を争った。しかし、ロシアの多くの人々はカトリックを嫌悪し、〔6〕正教の皇帝を求め、加えて長期の内戦を倦厭(けんえん)していた。そこで、有力貴族らの承認の下で、名門に属しながらも有力者とは言い難かった若いミハイルが選ばれたのである。

 

問4 下線部〔4〕の王朝の皇帝について述べた次の文aとbの正誤の組合せとして正しいものを、下の〔1〕〜〔4〕のうちから一つ選べ。[ 31 ]

 a ニコライ1世は、神聖同盟を提唱した。

 b アレクサンドル2世はクリミア戦争を開始した。

 〔1〕 a─正  b一正

 〔2〕 a─正  b─誤

 〔3〕 a─誤  b一正

 〔4〕 a─誤  b─誤

 

問4 口マノフ朝の正誤です。

 a ニコライ1世の前のツァーたるアレクサンドル1世が神聖同盟をウィーン会議で提唱しました。b クリミア戦争を開始したのはアレクサンドル2世でなく、ニコライ1世のまちがいです(『各駅』の覚え方は★ニコッではじめアレッで終わるクリミア戦争)。共に誤文なので、正解は〔4〕。

 

問5 下線部〔5〕の人物に関連してノルマン人について述べた文として正しいものを、次の〔1〕〜〔4〕のうちから一つ選べ。[ 32 ]

 〔1〕 グリーンランドや北アメリカにまで、到達した。

 〔2〕 クヌート(カヌート)は、イベリア半島を征服した。

 〔3〕 原住地は、アイスランドである。

 〔4〕 口口が、イングランドにノルマン朝を開いた。

 

問5 ノルマン人について正文を選べという問題。〔1〕グリーンランドや北アメリカにまで、到達した。1000年ちょうどにアメリカに到達しています。これが正解。〔2〕クヌート(カヌート)が征服したのはイベリア半島でなくイングランド。〔3〕ノルマン人の原住地は、アイスランドでなくスカンディナヴィア半島です。〔4〕口口が、イングランドに開いたのはノルマン朝でなく、デーン朝です。

 

問6 下線部〔6〕に関連して、中世のギリシア正教について述べた文として正しいものを、次の〔1〕〜〔4〕のうちから一つ選べ。[ 33 ]

 〔1〕 13世紀に、ギリシア正教会はローマ=カトリック教会と分裂した。

 〔2〕 ブルガール人は、ギリシア正教を受容した。

 〔3〕 ビザンツ帝国では、ギリシア正教会が皇帝を支配下に置いた。

 〔4〕 ビザンツ様式の教会建築の特色に、ステンドグラスがある。

 

問6 中世のギリシア正教の正文です。〔1〕これは東西教会の分裂として名高い事件ですが、13世紀でなく、11世紀です(『ワン』語呂は「東西教会、統10合5し4ない」)。〔2〕ブルガール人は、ギリシア正教を受容したため、ブルガリア正教が今もあります。これが正文で正解。〔3〕ビザンツ帝国では、ギリシア正教会が皇帝を支配下に置いたのではなく、逆。皇帝が教会を支配下におきました。〔4〕ステンドグラスがある教会はゴシック式のものです。ビザンツ様式の教会建築の特色はモザイク壁画であり、ドーム型の屋根(円屋根)です。

 

C 20世紀、ヨーロッパでは多くの国が君主制から共和制へ移行していったが、イギリスでは立憲主制が存続した。その理由の一つは、19世紀のヴィクトリア女王の下で進められたイメージ戦略に求めることができる。女王が即位する以前のイギリスでは、不人気な王も見られた。そこで、ハプスブルク家の〔7〕マリア=テレジアに始まるとされる「幸せな君主一家」のイメージが利用され(下図a参照)、女王は「貞淑な妻」「慈悲深い母」を演じた。こうしたイメージは、〔8〕選挙法改正によって存在感を増す国民の問にも浸透し、女主の人気を高める一因となった。また1870年代後半以降、女王は「帝国の母」として〔9〕植民地を統合する上での象徴的存在にもなっていった(下図b参照)。

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問7 下線部〔7〕の人物について述べた次の文aとbの正誤の組合せとして正しいものを、下の〔1〕〜〔4〕のう山一つ選べ。[ 34 ]

 a イギリスと同盟する外交革命を実現した。

 b 七年戦争の結果、シュレジエンを奪回した。

 〔1〕 a─正  b一正

 〔2〕 a─正  b─誤

 〔3〕 a─誤  b一正

 〔4〕 a─誤  b─誤

 

問7 マリア=テレジアの正誤問題です。 a イギリスと同盟する理由はありません。オーストリア継承戦争で奪われた土地の奪回のために、旧敵と関係を結んだために「外交革命」と言うのですから(オーストリア継承戦争→七年戦争のつながりは必須です。年代的にも「1740→56七年」とつながってます)。これは誤文。b 七年戦争の結果、シュレジエンを奪回できませんでしたから、これは誤文。したがって正解は〔4〕。

 

問8 下線部〔8〕について述べた次の文中の空欄[ ア ]と[ イ ]に入れる語の組合せとして正しいものを、下の〔1〕〜〔4〕のうちから一つ選べ。[ 35 ]

 イギリスでは、第2回選挙法改正によって[ ア ]などが、第3回選挙法改正によって[ イ ]などが選挙権を得た。

 〔1〕 ア─農業労働者 イ─都市労働者

 〔2〕 ア─農業労働者 イ─女性

 〔3〕 ア─都市労働者 イ─農業労働者

 〔4〕 ア─都市労働者 イ─女性

 

問8 選挙法改正の文章に適語を入れる問題。女性は20世紀の4回と5回にならないと選挙権は得られないので、女性のある〔2〕〔4〕は消却です。2回目は都市、3回目は農村でした。正解は〔3〕

 

問9 下線部〔9〕に関連して19世紀のイギリスのアジア・アフリカ支配について述べた文として誤っているものを、次の〔1〕〜〔4〕のうちから一つ選べ。[ 36 ]

 〔1〕 威海衛を租借した。

 〔2〕 ビルマ(ミャンマー)をインド帝国に併合した。

 〔3〕 ウラービー(オラービー、アラービー)の反乱を制圧した。

 〔4〕 南アフリカ連邦を成立させた。

 

問9 19世紀のイギリスのアジア・アフリカ支配の正誤問題です。

 〔1〕威海衛を租借してます(1898)。〔2〕ビルマをインド帝国に併合しました(1886)。〔3〕ウラービーの反乱を制圧した(1882)。〔4〕南アフリカ連邦を成立させたのは20世紀(1910)に自治領となります。これが「19世紀」ではないため誤文となり、正解。『ワン』の語呂は「南アフリカに、時1計91ゼロ0」。日韓併合やメキシコ革命と同年です。