世界史教室

大学受験生のための世界史問題解説

過去問センターワンフレーズ論述参考書疑問

2017年度・合格者の再現答案

2017年度再現答案
(再現答案について)
 どんな答案を書いたから合格したのか知ることができないものです。そこで実際に合格されたかたに受験場で書いた答案を、試験が終わってから時間のあまり経過していない段階で再現していただきました。合格者本人から掲載の許可をえています。答案として完全ではありませんが、合格に寄与した答案であることは確かです(もちろん世界史だけで合格できるわけでもないことは言うまでもありません)。ただ予備校の細かい知識を駆使(ひけらか)した答案ではなく、高校生・高卒生が書ける合格答案とはどういうものかを知ることができます。受験場ではカンニングする教科書・参考書・用語集はなく、それまで勉強してきたことを精一杯発揮した貴重なものです。(なお下線の必要な答案に下線が引いてありません)

 

東大第1問
中国では血縁に基づく共同体で構成された邑が連合した邑制国家や、王から封土を与えられて血縁共同体で支配する封建制だった。封建制では一族独自の宗法が定められた。春秋時代以降、周王の権力が弱体化すると、各地を支配した諸侯が中国統一を目指して戦乱を繰り広げた。諸侯は各地で富国強兵を進め、血縁的枠組みが解体されると地縁が優先されると共に、各国毎に貨幣や度量衡、独自の文字などの文化も生まれた。秦は厳格な法による支配を基に富国強兵を進め、各地の諸侯を征圧して統一を達成した。秦は貨幣を半両銭で統一して度量衡も統一した。また、文字も漢字で統一する共に、皇帝を中心とした官僚制を整備、中国の単一国家としての統一を達成した。ローマでは君主が制度上存在しない共和政が敷かれた。また、ローマは対外戦争で中国と異なり、武装自弁した市民が兵力として役割を担い、海外植民地である属州の獲得に貢献した。その結果、ローマは領土を拡大し多民族国家となった。ローマは属州と個別に同盟を結ぶ分割統治を行い、属州は当初市民権を与えられなかったが、同盟市戦争の結果獲得した。相次ぐ戦争と安価な輸入用穀物が原因で市民が没落し、有力者が没落した市民を私兵化した。ローマでは元老院が有力で独裁を許されず、カエサルが独裁を図ったが失敗した。その後オクタウィアヌスが台頭すると市民の中の第一人者として要職を兼任し、多民族国家ローマを治めた。


京大
問1
以前より匈奴は中国の諸国と抗争していたが、前3世紀中国を統一した秦の始皇帝の前に敗北した。しかし間もなく秦が滅ぶと冒頓単于のもとに勢力を回復。前漢の劉邦を白登山の戦いで破ったが、前2世紀武帝が現れると、彼が派遣した将軍に敗れ服属し、西域都護府が設置された。後漢に至るまでこの支配は続き、この間匈奴の中には漢民族と同化する者もいた。三国時代を経て3世紀に晋が中国を統一した。八王の乱の際に匈奴は他の異民族と共に兵力として用いられたのを機に介入するようになり、永嘉の乱で晋を滅ぼし、晋は東遷した。これ以降匈奴は鮮卑・氐などの遊牧民と勢力を争うようになり、五胡十六国時代が始まった。
問3
類似点としては、どの国も既存の社会主義体制に対する批判が起き、資本主義的政策を導入せざるを得なくなった事である。ソ連はペレストロイカ・グラスチノスチを、東欧諸国は民主化を、中国は改革開放政策を、ベトナムはドイモイ政策を行った。相違点としては、ソ連・東欧諸国・ベトナムでは共産党の一党独裁体制が崩壊し、選挙に基づく民主制が導入されたのに対して、中国は天安門事件を起こし独裁体制を維持した事、ソ連・中国では共産党の指導の下改革が行われたのに対し、東欧諸国では民衆が改革を主導した事、ソ連・東欧諸国・ベトナムでは大きな紛争無しに改革が行われたが、中国は天安門事件を引き起こした事である。


阪大
第1問・問2
元が支配していた中国では、商人たちは交鈔と呼ばれる紙幣を使って諸外国と交易を行った。外国からは取引に使われた金銀が流入し、中国国内に銀が流通するようになり、、後の税制改革につながった。両税法から一条鞭法への転換である。商業が盛んになって、実力者が覇権をもつ流動的な社会だった。ユーラシア西方地域では反して、絶対王政がしかれており、生活基盤はギルドを単位としていた。
第2問
達成されたもの。ドゥーマが設置された。スイスに亡命していたレーニンが帰国し、と「平和に関する布告」を交戦国に発布した。民族自決の動きが強まった。続いて第一次五ケ年計画、第ニ次五ケ年計画が行なわれ、と国内産業が発展し、と列強と肩を並べるようになった。また、世界で初めて人口衛星を打ち上げ、その名を世界に知らしめた。課題として残されたもの。二度の世界大戦を終え、アメリカとソ連の間には冷戦構造が形作られた。お互い戦うことはなかったが、諸外国に影響を与えた。キューバにミサイルを設置したことで両国の緊張が高まったが、と後に撤去された。壁崩壊を経て、冷戦構造も一応の収束を見たが、両国は未だに互をけん制し合っている。
第3問(外国語学部)
問1 アメリカ・イギリス戦争でイギリスからのアヘンの物資輸出が止まったことで、かえってアメリカ国内の産業が発達した。南北戦争では奴隷解放宣言が出され、近代化が推進された。
問2 第二次世界大戦の戦勝国となったアメリカは敗戦国から賠償金を請求し、更なる産業の発展があった。ロシアの動きをけん制した。
問3 ヨーロッパ連合国内ではそれぞれの国への行き交いにビザが必要でなく、貨幣経済も統一ている点が、アジア太平洋経済協力と異なっている。