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世界史教室

大学受験生のための世界史問題解説

過去問センターワンフレーズ論述参考書疑問

東大世界史1998

第1問

 アメリカ合衆国とラテンアメリカ諸国は、ともにヨーロッパ諸国の植民地として出発した。しかし、独立後は、イギリスの産業革命などの影響の下で対照的な道を歩むことになった。たとえば、アメリカ合衆国の場合には、急速な工業化を実現していったのに対して、ラテンアメリカ諸国の場合には、長く原材料の輸出国の地位にとどまってきた。そしてラテンアメリカ諸国は、政治的にも経済的にもアメリカ合衆国の強い影響下におかれることになったが、その特徴は、現在のラテンアメリカ諸国のあり方にも大きな影響を及ぼしている。

 そこで、18世紀から19世紀末までのアメリカ合衆国とラテンアメリカ諸国の歴史について、その対照的な性格に留意しつつ、ヨーロッパ諸国との関係や、合衆国とラテンアメリカ諸国との相互関係のあり方の変化を中心に、下に示した語句を一度は用いて、解答欄(イ)に15行(1行30字)以内(450字)で記せ。なお、使用した語句に必ず下線を付せ。

  プランテーション、パン・アメリカ会議、南北戦争、ウィーン体制、自由貿易主義、モンロー宣言、クリオーリョ、米英戦争

 

第2問

 ヨーロッパやアジアでは、キリスト教やイスラムの改革運動が政治や社会の動向に大きな影響を及ぼしてきた。これらの運動に関する以下の(A)~(C)の文章を読み、設問(1)~(7)に答えよ。解答は解答欄(ロ)を用い、設問ごとに行を改め、冒頭に(1)~(7)の番号を付して記せ。

 

(A)西欧では、10~11世紀にかけて、フランスの修道院を中心に、カトリック教会を浄化・粛正しようという運動が起こった。11世紀後半には、教皇のもとで教会改革が推し進められ、世俗の支配者による聖職叙任をめぐって教皇と神聖ローマ皇帝が激しく衝突することになった。

 (1)修道院改革の中心となったフランスの修道院の名を記せ。

(2)神聖ローマ皇帝が、聖職叙任権を手放そうとしなかった最も大きな理由は何か。2行以内で記せ。

(3)聖職叙任をめぐって衝突した教皇と神聖ローマ皇帝の名を記せ。

 

(B)西アジアでは、アッバース朝時代になると、イスラム諸学を身につげた知識人(ウラマー)は、コーランや伝承にもとづいて教義や儀礼を整え、神学や法学の高度な発達をもたらした。しかし都市や農村の民衆にとって、知識人が説く教義や儀礼はあまりにも形式的であり、しかも難解にすぎた。神(アッラー)はもっと身近に感じられるはずである、というのが彼らの偽らざる心境であった。

 (4)このような気運に促されて10世紀以降に流行したイスラム世界の宗教運動の名前を記せ。

(5)また、その運動がのちに果たした役割を2行以内で説明せよ。

 

(C)18世紀の半ば、アラビア半島の中部ではイブン=アブドゥル=ワッハーブがイスラムの改革運動を開始した。それは預言者ムハンマドの時代のイスラムを理想とし、後世のイスラム世界に広まった聖者崇拝などを、本来の教えからの逸脱として激しく攻撃した。このワッハーブ派の勢力は、19世紀のはじめに半島内の二つの聖地を占領したことでも知られる。

 (6)この事件と同時代の19世紀はじめにエジプトで統治の実権を握った人物は誰か。この人物の名前を記せ。

(7)上の文にある「二つの聖地」とはどこか。その都市名を記せ。

 

第3問 

 人と人とがふれあう場所には必ず言語がある。言語による情報伝達をぬきにして、文化交流や社会移動の実態を考えることはできない。近代以前の言語の歴史にかかわる次の設問(1)~(10)に答えよ。解答は解答欄(ハ)を用い、設問ごとに行を改め、冒頭に(1)~(10)の番号を付して記せ。

 

(1)ナポレオンのエジプト遠征中に発見されたロゼッタ・ストーンには、三種類の文字が書かれている。ギリシア文字のほかに、どのような文字が使用されていたか。それらの文字の名称を記せ。

 

(2)アケメネス朝ペルシアの領域では、ペルシア語以外の言語も公用語として使用された。その公用語の名称を文章中に用いて、その言語が公用語とされた理由を1行以内で記せ。

 

(3)北アフリカに君臨したカルタゴは交易活動によって繁栄したが、農業においてもすぐれたところがあった。このためにローマ人はカルタゴ人の農業書をラテン語に翻訳している。その農業書は何語で書かれていたのか。その言語の名称を記せ。

 

(4)ビザンツ帝国では、首都コンスタンティノープルを中心に、古代ローマを継承した文化が開花した。この帝国の公用語は何語であったのか。その言語の名称を記せ。

 

(5)スペインのトレドでは、12世紀になると、科学や哲学の書物が活発に翻訳された。こうした翻訳書がパリなどに流入することで、中世スコラ学は飛躍的に発展した。この場合、主として何語から何語へ翻訳されたのかを記せ。

 

(6)10~12世紀ごろモンゴル・中国東北部と華北の一部を領有した国家は、表意文字を作り、それはのちの女真文字の形成に大きな影響を及ぼした。その国家の中国風の国号は何か。またその表意文字の名称は何か。それぞれ記せ。

 

(7)殷王朝は、かつて実在が疑われていた。この王朝において使用され、19世紀に発見されて殷の実在を証明した文字は何か。その名称を記せ。また、この文字が発見された場所を含む遺跡の名称を記せ。

 

(8)13世紀に大帝国を建設したモンゴル人は、その領域内の諸文化のすぐれた面を知っていたため、中国文化に対しても、一定の距離をおいて対応することができた。中国を支配したのち、公文書に彼らが用いたチベット系の文字は何か。その名称を記せ。

 

(9)インドのグプタ朝は古典語による文学が栄え、古典文化の黄金期とされる。のちに長く継承されたこの古典語の名称と、グプタ朝期に完成した叙事詩の名称ひとつを記せ。

 

(10)中国の支配下におかれたことのあるベトナムでは、漢字を改良した民族文字が使用されるようになった。13世紀に興った陳朝のもとで、この文字を用いた作品が作られたことがよく知られている。この文字は何か。その名称を記せ。

………………………………………

[第1問の解き方

 主問(主たる要求)は「18世紀から19世紀末までのアメリカ合衆国とラテンアメリカ諸国の歴史について」、副問(副次的要求)は「その対照的な性格に留意しつつ、ヨーロッパ諸国との関係や、合衆国とラテンアメリカ諸国との相互関係のあり方の変化を中心に」という副問のほうが複雑な問いです。「対照的」にとあり、どれだけ「ちがい」として表せるかが課題です。合衆国がこうこう、それに対してラテンアメリカがこうこうと書いてみてください。ある予備校の速報には、これは経済史だ、経済史を書かなくてはいけないと断定した講評をしていましたが変ですね。なにも経済だけの問題として提示されていません。経済も政治も双方とも書かなくてはなりません。すでに問題文のはじめに経済のことは対照的に書いてありますので、同じことを書いてもだめです。文化も書いてもいいですが、書けるかどうかは学生の能力しだいです。「ヨーロッパ諸国との関係」は指定語句から書かざるをえないことになりますので、かえってあまり気にしなくてもいいでしょう。

(解答例──以下の解答を批判してみよ)

北アメリカでは18世紀後半、13植民地がイギリスから政治的独立を達成した。19世紀初頭、ナポレオン戦争を契機におこった米英戦争で北部には木綿工業が発展したが、南部には奴隷制プランテーションが定着した。この経済的な対立は南北戦争へとつながり、以後この戦争で勝利した北部主導の本格的な産業革命が進展し、工業国家として発展した。一方ラテンアメリカ諸国は、19世紀初頭クリオーリョを中心に主にスペインから独立した。ウィーン体制下に、旧本国は干渉を行おうとしたが、合衆国は新旧両大陸の相互不干渉を唱えるモンロー宣言を発して、自由貿易主義をとるイギリスとともに独立を支持した。しかしラテンアメリカ諸国は政治的な独立を達成したものの、工業化を果たせずプランテーションによる農業経営が残存したため、産業革命後のイギリスの製品市場・原料供給地となり、経済的にはその従属下にはいった。19世紀後半工業化を達成した合衆国は、パン=アメリカ会議を契機にラテンアメリカ諸国への帝国主義的な進出を開始し、カリブ海政策を展開した。

▲ラテンアメリカの18世紀の歴史は書いてありますか? 「対照的な性格」は問題文の経済のちがい(すでに問題文に書いてあることと同じことを書いている)以外に何か書いてありますか?

 

(わたしの解答例)

第1問  

 わたしの解答例は『東大世界史解答文』(電子書籍・パブー)に1987年から2013年までのものが載っています。

第2問 

(1)クリュニー修道院 (2)神聖ローマ皇帝は聖界俗界の最高支配者として統治するために、教会とトップの教皇を支配下におくことも必要であった。 (3)グレゴリウス7世、ハインリヒ4世 (4)スーフィズム (5)形式を排するこの信仰は都市の手工業者や農民に普及した。さらに貿易路に沿ってアフリカやインド・東南アジア・中国に伝わり各地の習俗をとり入れながら、イスラムの信仰を広めていった。 (6)ムハンマド=アリー (7)メッカ、メディナ

第3問 

(1)神聖文字(ヒエログリフ)、民衆文字(デモティック) (2)当時の国際商業語であったため公用語としたアラム語。 (3)フェニキア語 (4)ギリシア語 (5)アラビア語からラテン語へ (6)遼、契丹文字 (7)甲骨文字、殷墟 (8)パスパ文字 (9)サンスクリット語、マハーバーラタ (10)チュノム(字喃)